シラバス情報

科目名
書籍空間論
担当教員名
石川 敬史
ナンバリング
EDe1018
学科
2021年度 大学 教育人文学部 文芸文化学科 日本語・日文コース 2年
学年
2年
開講期
2023年度前期
授業形態
演習
単位数
2.00単位

実務経験の有無
実務経験および科目との関連性
司書としての実務経験のある者が,近年の公立図書館政策や自治体の動向,図書館活動・実務,出版流通の傾向を踏まえながら指導する。

ねらい
①科目の性格
★★授業初回の出席を必須とします。★★
★★土曜日の3限以外に続けて4限にも授業を行う場合があります。
★★授業内で実習を行うため対面で授業を行います(オンラインは使用無しです)。教材数の関係により,履修者が多くなった場合「抽選」とします。初回の授業以降,教員からのメール連絡を必ずご確認ください。
本科目は,図書館司書課程の選択科目であり,文芸文化学科の専門科目(2年以上配当)として位置している。近年,図書館や書店をはじめ,カフェなどの商業施設などにおいて,書籍(図書,雑誌,灰色文献等を含む)を選択し,展示(配列,POP等の制作)する魅力的な「場」づくりが広がっている。本科目では,出版流通の特徴,図書館のコレクション構築のプロセス,書籍等のさまざまな資料の種別を踏まえつつ,サードプレイスの理論やコミュニティデザインの手法も理解しながら,さまざまな書籍を媒介に人々が集う空間の意義と特徴を考える。
②科目の概要
書籍の売上や書店数が減少する中でも、書籍と人をつなぐ活動が各地に広がっている。編集のプロセスや出版の類型、商業出版における流通制度の特質を理解したうえで,絵本専門店,カフェ併設の古書店など書籍空間を構成する要素を考察する。同時に、テーマの選定、選書、POP制作、展示という行程を学外の書店や図書館等において演習することにより、書籍空間と出版文化、知的自由、コミュニティ形成との連続性を検討する。
③授業の方法(ALを含む)
講義形式における授業内容の理解とともに,展示物の制作,受講者同士の議論(グループワーク),ミニワークショップ,実際の書籍展示を伴う演習(プレゼンテーション)を通して,書籍空間の構成要素や書籍空間をつくる意義を実践的に学ぶ。
*学外の機関・施設にて実習・演習する場合,交通費は学生が負担することとする。なお,今のところ学内の図書館にて実習・演習予定である。
リアクションペーパー/レポート/グループワーク/プレゼンテーション/フィールドワーク/創作、制作
④到達目標
1.どのような場所で,どのような方法によって書籍を中心とした空間がつくられているのかを理解し,説明することができる。
2.サードプレイスの理論やコミュニティデザインの手法を理解し,その手法を用いる社会的意義を説明することができる。
3.魅力的なPOPの制作の方法をはじめとした書籍の展示手法を習得し,実際に作成・展示することができる。
4.来館・来店者の視点で,テーマの設定,選書,展示という流れを企画立案し,実行することができる。
⑤ディプロマ・ポリシーとの関係(右の資質・能力を育成することを目的とする)
ED③-1 情報収集・分析/ED③-2 課題発見・考察/ED③-3 価値観の創造、発信

第1回
事前学習
これまでの「書店」の利用経験についてまとめておくこと。その際,書店内にどのような展示・コーナーがあったのかをまとめておくこと。時間があれば,実際に書店に立ち寄って,どのような展示コーナーがあるのかを確認すること。
90分
授業内容
オリエンテーション:近年の図書館空間,書店空間の傾向【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。特に,本を取り巻く空間の特徴について,関連文献(辞典や図書館建築の資料)を用いてまとめておくこと。
[次回事前学修]書店と図書館における本の配置(配列)の違いを比較して,整理しておくこと。
180分
第2回
授業内容
図書館における排架・分類方法,展示方法:さまざまな資料種別【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。司書課程履修者は「図書館情報資源概論」の教科書のうち,資料の種別の箇所を通読しておくこと。未履修者は,本学図書館(もしくはこれまでの公共図書館利用経験)を事例に,図書館にはどのような資料が所蔵されているのか,どのように配列されているのかを確認すること。
[次回事前学修]書店やスーパーなどで具体的にどのようなPOPが作成されているか,その種類,傾向,場所などを調べておくこと。
180分
第3回
授業内容
POPをつくる技法:言葉の選択,特徴【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。POP制作の技法や,その効果を再び確認すること。
[次回事前学修]各自,POP作成の課題に取り組むこと。
180分
第4回
授業内容
展示を編集する:選書,コレクションの構築,主題知識【リアクションペーパー】【グループワーク】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。授業内で意見交換した受講生の報告を踏まえ,自身の考え(選書,コレクション構築等)をまとめておくこと。
[次回事前学修]これから挑戦する「ヒトハコ図書館」について,どのようなテーマで図書館をつくるのかを考えておくこと。事前にOPACなどで選書しておくこと。選書の際,配列も念頭に検討すること。
180分
第5回
授業内容
ヒトハコ図書館づくり(1):企画,選書,POP制作【リアクションペーパー】【創作・制作】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。選書や自身のテーマ設定について,授業での受講生同士の意見交換を踏まえ,自身の選書やテーマを再確認すること(関連文献などを用いながら)。
[次回事前学修]POP制作,展示物制作など,選書した図書に付加価値を与え,魅力的な展示になるような制作物を各自作成すること。
180分
第6回
授業内容
ヒトハコ図書館づくり(2):展示作業,発表【リアクションペーパー】【創作・制作】【プレゼンテーション】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。受講生の「ヒトハコ図書館」の報告を踏まえ,自身の「ヒトハコ図書館」を振り返り,相対化し,選書やテーマ設定,展示方法(演出方法)に対して考えをまとめておくこと。
[次回事前学修]身近にどのような書店・図書館があるのかを調べておくこと。可能であれば,所蔵している(並んでいる)資料の種類や特徴をまとめておくこと。
180分
第7回
授業内容
まちライブラリー,マイクロライブラリーの挑戦【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。まちライブラリー,マイクロライブラリーに関する文献を通読すること。
[次回事前学修]公立図書館にどのような「地域行政資料」が所蔵されているのかを調べておくこと。司書課程履修者は「図書館情報資源概論」の教科書のうち,地域行政資料の範囲を通読しておくこと。
180分
第8回
授業内容
まちづくりと地域資料づくり:コミュニティデザイン,日野宿探検隊の事例【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。地域資料の特性をはじめ,利用・保存の意義についてまとめておくこと。
[次回事前学修]さまざまな「本屋」(セレクト型(独立系)の本屋)について,その具体的な事例を調べるとともに,その特徴を整理しておくこと(Webや関連文献から)。
180分
第9回
授業内容
サードプレイスとは何か:人が集う図書館・書店の空間【リアクションペーパー】【グループワーク】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。「サードプレイス」の概念について,関連文献などから復習しておくこと。
[次回事前学修]「市民アーカイブ多摩」のWebページを閲覧し,その歴史,設立の目的,所蔵資料の特徴や活動の概要を整理しておくこと。
180分
第10回
授業内容
市民が創る資料:市民アーカイブ多摩の事例(ミニコミ・灰色文献等)【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。「市民アーカイブ多摩」のWebページを再び閲覧し,授業内容を振り返り,活動内容を整理すること。
[次回事前学修]近年の図書と雑誌の販売実績(経年推移)について,Webや関連文献などから調べておくこと。
180分
第11回
授業内容
書籍の流通:出版流通,書店業界の動向【リアクションペーパー】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。
[次回事前学修]内沼晋太郎氏の活動や,どのような本屋をプロデュースしているのかなどを関連書籍やWebページから調べておくこと。
180分
第12回
授業内容
本屋×○○をめぐる空間【リアクションペーパー】【グループワーク】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。受講生の報告を踏まえ,「本屋」についての自身の考え,これからの「本屋」のあり方をまとめておくこと。
[次回事前学修]書店で選書する(特集図書コーナー設置する)本のテーマについて考えておくこと。可能であれば,近隣の書店を訪問し,どのようなコーナーが設営され選書されているのかを確認すること。
180分
第13回
授業内容
書店における展示コーナーづくり(1):企画,選書,POP制作【リアクションペーパー】【創作・制作】【フィールドワーク(予定)】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業内容を踏まえながら,選書した図書に対してPOP制作をすること(次回事前学修にも含まれる)。
[次回事前学修]POPの制作以外に,展示コーナー設営で必要な物品や仕掛けなどを考えておくこと。
180分
第14回
授業内容
書店における展示コーナーづくり(2):展示作業,発表【リアクションペーパー】【創作・制作】【プレゼンテーション】
事後学習・次回事前学習
[事後学修]授業で配布した資料を通読すること。受講生の報告を踏まえ,自身が制作したPOPや選書した図書・テーマなど,相対化して,長所や短所を整理しておくこと。
[次回事前学修]図書(新刊本,古本を含めて)に付加価値を与える(演出をする)意味や効果について考えておくこと。
180分
第15回
授業内容
まとめ【レポート】
事後学習
・書籍空間を構成するために必要な要素,資源について考え,まとめておくこと。
・これまでの本科目での授業内容(講義,制作物,配布資料など)から,「書籍空間」をつくる社会的意義について,自身の考えを整理しておくこと。
180分

フィードバック
・毎回コメントペーパーを配布する。学んだこと,発見したことなどを整理すること。授業中に毎回グループワークによる意見交換を行う。
・コメントペーパーの内容,制作したPOPや選書した図書については,随時授業内でコメントする。
・授業内での質疑なども含め,できるだけ双方向性を重視した授業とする。積極的な発言・意見交換を期待する。
評価方法および評価の基準
授業中の課題作成(40%),授業への参画・発表(10%),最終課題(50%)とし,総合評価60点以上を合格とする。
到達目標(1):課題提出(10%/40%),参画・発表(0%/10%),最終課題(10%/50%)
到達目標(2):課題提出(10%/40%),参画・発表(0%/10%),最終課題(10%/50%)
到達目標(3):課題提出(10%/40%),参画・発表(5%/10%),最終課題(10%/50%)
到達目標(4):課題提出(10%/40%),参画・発表(5%/10%),最終課題(20%/50%)

教科書
推薦書・参考文献
教科書は特に指定しない。参考文献は授業中に提示する。
・「世界一美しい本屋の作り方」『建築知識』2020年1月号
・内沼晋太郎『これからの本屋読本』NHK出版,2018
・「本の道しるべ」『NHKテキスト趣味どきっ』2020年10-11月
・磯井純充『マイクロ・ライブラリー図鑑』まちライブラリー文庫,2014
・磯井純充『まちライブラリーのつくりかた』学芸出版社,2015
・磯井純充ほか『マイクロ・ライブラリー』学芸出版社,2015
・『全国旅をしてでも行きたい街の本屋さん』GB,2018
・吉岡裕子,遊佐幸枝『発信する学校図書館ディスプレイ』少年写真新聞社,2015

履修上の助言、教員からのメッセージ
★初回の授業の参加を必須とします。初回に履修者が多い場合,抽選科目とします(初回欠席の場合,抽選対象外とします)。
★対面の授業にて,受講生と協力しあいながら制作・作業を重視する授業です。「対面」のみで授業を行い,毎回の出席を重視します。受講生の積極的な発言・行動も重視します。
★コロナの感染状況にも左右されますが,外出する場合もあります。
★土曜日の3限以外に,土曜の4限に数回授業を行います。また,場合によっては,平日の昼休みの時間帯など授業を行うこともあります。できるだけ早めにアナウンスします。
★マジック,マスキングテープ,はさみ,厚紙など,図書展示に必要な文具は,各自受講生に用意していただく予定です。